時の話題 「先日の講演会」

 この数年、全国各地でクマが出没し場合によっては人が死傷している。山菜やキノコ採りで入山した場合、森で暮らしているクマとの遭遇は止むを得ないものの、クマが人里に現れるという逆のケースは人命に大きく係わることなので深刻な問題だ。
 折も折、先週末に稚内で一般財団法人の日本熊森協会北海道支部主催の講演会が開かれた。会場となった風~るわっかないには80人もの市民が集まり、「再エネがもたらすものとは」をテーマに室谷悠子協会長とクマなど動物に詳しいネイチャーガイドの安藤誠氏の講話があった。
 尾根伝いに建設される風力発電施設によって山の乾燥化が進み涵養力(保水力)が喪失した森を追われたクマがドングリなど餌が減っていることもあって人里に現れるようになったとして「森無くして人無し」(室谷会長)、「クマは凶暴で危ないという報道は事実誤認」(安藤氏)などと語ったが、それはクマ擁護派の話であり、街中に住む人間としては「ハイそうですか」と納得できるものでない。
 稚内の街中を闊歩するシカなら看過できるがクマとなれば話は別物で筆者が納得するには無理があった。しかし稚高に在籍したことがあったという安藤さんはアイヌの教えからクマは母性の象徴であり大地の中で生きる動物達全体の象徴であるとして信頼できる情報に基づいた接し方があることにも言及していた。
 シカと人間との共生は可能だが、クマとは100%有り得ない。抜本的な解決策を探らなければならない。