抜海駅存廃の綱引き続く 住民と合意し廃止目論む稚内市
存廃問題に揺れるJR宗谷線の抜海駅は、来年3月末でのJR北海道の廃止方針を受け廃止しようとする稚内市と存続を求める地域住民との間で意見が対立している。
抜海駅は、JR北海道が廃止か自治体負担での存続を求めている29の宗谷線にある無人駅のうちの一つで、利用している地域住民は現在、通学で高校生1人、不定期で通院での利用をしている住民1人がいる。
現状では地域公共交通が持つ役割を果たすことができていないとし、稚内市は廃駅後の代替案として、小中学校の登下校で4便運行しているスクールバスを1便増やし住民にも開放する案と、曲渕などで運行している乗り合いタクシーを運行し地域住民の足を確保したいとしている。
これらの案について7月28日に抜海町内会住民との間で開いた説明会で提案したが、住民はスクールバスの運行は時間帯が早朝と夕方になるため買い物などの時間に合わないなどと反対し、乗り合いも予約が必要で不便だとして拒否し駅の存続を求めた。
スクールバスを1便増やした経費は年間130万円増え、市側が駅を管理した場合の維持費などは年126万円となる。
市の渡辺まちづくり政策部長は廃止後の代替案について「10年後には住民の半分が70歳以上になるので金額の問題ではなく地域の足を守るためで、住宅街から離れた駅まで行くよりは住民の自宅の前まで送迎した方が今後のことを考えると利便性も高まることになる」と話していた。
今後は日程調整しクトネベツ町内会住民とも説明会を開く予定で渡辺部長は「市としての考えは変わっていないが、地域の合意を得た上で進めていきたい」としている。
「鉄道ファンからメッセージ」
建築から100年が経ち最北の秘境駅とも呼ばれる抜海駅には、存続問題が取り沙汰されてから多くの鉄道ファンが訪れている。
駅舎の中には訪れた人が思いを残すノートが置かれており、2日~4日にかけて道内外から訪れた人が存続を願う気持ちがノートに綴られている。
「今回の訪問が最後にならないことを切望します」(千葉)、「朝に深川を出て深名線巡りをした後に立ち寄った。いい駅です。本当に残してほしい」(函館)、「このような駅は本当に珍しくて見に来た甲斐がある」(東京)、「宗谷線に限らず地方鉄道の存続を願っています。稚内市の前向きな理解と決断を期待する」(東京)「最北の木造駅をぜひ残してほしい」(東京)など。