時の話題 「元事務次官の憂鬱」
官僚のトップ事務次官を務めた76歳の男が発達障害があり家庭内暴力を働いていた息子(当時44)を刺殺した事件で東京地裁の判決があり懲役6年(求刑懲役8年)の刑が言い渡された。犯行に及んだ事情など察し執行猶予はとも角、求刑の半分4年位の実刑かなと思っていたが、厳しい判決となった。
子殺し親殺しは家族という人間社会の基礎を破壊してしまうことから厳罰を課せられるケースが多い。
今回の事件も発達障害があり仕事が続かずゲームをし家に引き籠るという自堕落な生活をしていた息子が自宅に住むようになり1週間の今年6月1日に起きた。妻と自らの命が危険に晒される恐れがあったとはいえ深さ10㌢に達する数十カ所を滅多刺しにするという残忍さがあったのは否定できず、事情を察し一般国民の減刑嘆願の思いはあったであろうが裁判官は「短絡的な面がある」と断じた。
裁判員裁判だったので裁判員が判決後に記者会見に応じ「家庭内の問題だったので警察など公的機関に相談しづらかったのかも知れないが、外部に助けるべきだった」などとコメントしていたが、果たしてどうなのか。
自らが同じ立場にあるなら元事務次官というプライドもあり、そう易々とできるものでない。親としての心情は愛する我が子をどうにかして立ち直らせたいという強い思いがあ
ったはずで、一つの行為で短絡的というより衝動的な行為に至ったのは生身の人間としてしょうがない事だったとも言えよう。人間には表だけでは窺い知れない裏があること思い知った事件だった。