時の話題 「憂慮する再稼働」

 東京電力の柏崎刈羽(新潟県)、北海道電力の泊にある原発2機が相次いで地元知事の稼働同意を得た。泊は道内での電気需要を賄うのだから妥当だろうが、東京都が使う電力をどうして新潟県が負わなければならないのか。原発建設の立地条件として海に面していなければならないにしても他県がリスクを抱えるのは理不尽だ。
 日本列島改造論をぶち上げ原発推進を提唱した当時の田中角栄総理でさえこの矛盾について言及していたと言うのだから国策である原子力政策の、ある意味でのいい加減さが見え隠れする。
 2011年3月の東日本大震災での巨大津波で原子炉のメルトダウン(炉心溶融)を引き起こし、その後廃炉になった福島第一原発事故後、国は原発推進を後退させ風力や太陽光など再生可能エネルギーでの発電に大きく舵を切ったのだが、自然エネルギー発電には無駄が生じ石炭や原油LNG(液化天然ガス)など化石燃料に頼らざるを得なくなり、そのほとんどを輸入するため膨大な国費が投入されてきた。
 これじゃいかんとばかり原発への先祖返りを画策した結果、福島原発事故の10年後位から停止していた原発が稼働するようになった。再稼働した会社は関西、九州など西日本地域が多く、電気料金が割安になったことから東日本以北にも拡大するようになったのが今の姿である。
 日本の食糧基地である北海道で原発事故が起きた場合の影響は火を見るより明らかで、泊原発周辺町村が同意したとはいえ鈴木知事は断腸の思いで同意したのだろう。