時の話題 「美談多き世の中に」

 1912年、大西洋で氷山に衝突し沈没し乗客・乗員1500人以上が亡くなった豪華客船タイタニック号の乗船客の遺品が過去最高の178万㍀(約3
億6千万円)で競り落とされたという記事が朝日新聞に載っていた。遺品は老夫婦の妻から夫に贈られた懐中時計で、ここまでは何の変哲もない話なのだが、この老夫婦が船が沈没する際に救命ボートへの乗船を拒否した。この話が沈没秘話として伝えられ高額の落札額となったのではと推察される。
 年老いた自らよりも将来のある若い人達を助けてあげたいとする老夫婦の思いが人間の尊さを表すこととして落札者が評価したのだろうか。
 富を作っても名を成すとは限らず人の道から外れれば守銭奴と呼ばれ蔑まれる。
 太平洋戦争後、旧財閥は解体され誰もが立身出世の成功者になる可能性がある民主資本主義の世の中において富を得た成功者は大勢いたが、人の道から外れ政治家に賄賂を贈り事件となり逮捕された者もいた。資産家になれば少々悪いことをしても許されるという幼く甘えた考えによるものだが、言ってみれば自分らの命を捨てても他人を助けた老夫婦とは正反対ともいえる愚行だ。
 老夫婦の行いに感銘を受けた資産家が落札したとみられるが、100年以上も前の事を語り継いできた親族ら関係者の方々の努力を忘れてはならない。
 人間は嫌な面がある他方、神さまのような慈愛もある。未だに戦争を続ける馬鹿者もおり停戦に向け奔走したとして言い張る人もいる。情けない限りだ。