時の話題 「ミスター死す」
「ミスタープロ野球」「熱い男」など数多くの異名があった長嶋茂雄氏が亡くなった。89歳だった。
筆者とは20歳近く離れているので王選手とのON砲で読売巨人軍のV9時代を支え、巨人軍の監督としてチーム史上初の最下位からの優勝、ダイエーの王監督とのプレミアムな日本シリーズ対決など野球選手・監督としての活躍しか知らず立教大学時代、プロ野球選手初年の金田正一投手(国鉄)に4連続三振喫するなど球史に残る出来事として知ってはいるが、現実世界での長嶋さんは脳梗塞後の不自由な体を厭わず野球を少年少女に教えていた姿だった。
スターに〝スーパー〟が付いた長嶋さんが居るだけでその場が眩しく感じるほどの存在感があった。しかし、それは現役時代同様、人知れず練習し悩む姿も浮かび上がらせた。
「天才ではなく練習の虫だった」との言葉に彼の葛藤がありスーパースター長嶋茂雄であることの煩悶は小さくなかった。「初めて還暦になりました」など名句(迷句か)は逆に長嶋さんを表し更に愛されたのだろう。
スーパースターを最期まで演じ切り大往生したといえよう。
筆者なりに人となりを分析すると少年時代大学・プロ野球最初の頃は野球バカだったに違いない。それが野球と人生の奥深さを知ると共に「スターの仮面」を被った哲学者に変貌したのかも知れない。体が不自由になりリハビリする姿をあからさまに公開することで人の一生の有為転変をも凡庸な我々にわからせようとしていたのか。ゆっくりお休みください。


