時の話題 「シラミたかれ」

 「いい振りこきのシラミたかれ」。生前、母がよく言っていた言葉だった。身の丈を超えた行動をするとシラミしか残らず我慢することが大事との戒めであった。
 仕事柄、人と接触する機会が多いこともあり、つい調子に乗り大言を吐いたり見栄を張ることがあったこともあり、肝に銘じている筈なのだが、シラミたかれになってしまう。
 このため当方、何かと散財することが多くお金は無く、よく妻に「うちは騙される心配はないね。何せお金が無いのだから」と窘められる。
 思うに人は一生に一度や二度、大きな運が舞い込む事がある。博打ばかりでなく仕事でも財を成し、この世の春を謳歌する。
 大事なのはそれからで昇り龍だからといって野放図に浪費したり武士の商法ならん筋違いの事業に手を出すと痛い目に遭う。
 稚内の中で例を挙げると往時の底曳き網漁業であり下処理をしていた水産加工場であろう。100以上あった加工場は底曳き漁衰退と共に廃業する所が多くなり、50工場を割り今は20工場位まで減ってしまった。それも大半がホタテ処理の工場で、残った沖底船5隻が偶に豊漁になるとホッケやタラなどは他の町まで運ばれ下処理されている。
 留萌の数の子のように全国的に有名な産物にならず、ただ原魚を処理するという、その場限りの遣り方に終始したツケがその後の凋落に拍車をかけたのだろう。
 他の町では土建業の会社の倒産が増えている。稚内も二の舞を演じないよう先行きを考えなければなかろう。