週末雑感

 モンゴル出身の豊昇龍が第74代横綱になった。喧嘩殺法の朝青龍の甥っ子である。
 同時昇進の可能性があった琴櫻との違いは精神力である。好機逃さずという殺気あふれた気概に尻込みした対戦相手に対し絶対有利の体勢を作り土俵外にぶん投げる気迫は角界一品でハングリー精神も相俟ってワンチャンスを物にした。
 その豊関に対し先場所優勝し舞い上がってしまった琴関は本場所前の稽古を満足にせず精神面の弱さも露呈し綱取りどころか給金相撲さえ取れず5勝10敗と惨敗した。幼い頃から相撲に親しんだといえ所詮こどもの戯れ事であり〝坊ちゃん力士〟の限界を見た思いをしている。立会い前最後の鬼の形相が本物になること願っている。
 初場所は大横綱大鵬の孫王鵬の活躍が目立った。千秋楽で金鋒山を引きずり降し豊昇龍との巴戦で敗れたものの、12勝3敗の準優勝なので来場所での初の三役が確実になったのは縁のある稚内市民として慶事だった。稚内東部前社長の仲村房次郎さん=横浜在住=はさぞや喜んでいることだろう。
 器的には大関の資格はあろうが、肝心要は心の強さである。琴関のよう肝所での弱さは力士として致命傷になるので心して精進せねばなるまい。
 相撲含めスポーツの世界は過酷だ。生き馬の目を抜くような非情さをくぐり抜けなければ栄冠はもたされない。日頃から漫然と練習(稽古)することなく最悪の場合と最良の場合を想定し鍛錬しなければならない。
 飽くなき精進する者にしか輝かしい光は射さない。