時の話題 「高齢者の求職増」

 過日開かれた三水会9月例会の会員スピーチ講師を務めた藤本智子稚内職安所長によると、8月末での稚内職安管内7高の求職者は公式には75人とされているが、実のところ120人ほどいるとの話に驚いた。その理由として家庭の経済的問題を挙げていたことにショックさえ覚えた。
 確かに公式な求職者75人とて今春卒業生(昨年)の33人から倍増しており、120人以上としたら4倍近くにもなる訳で、この数字通りだとすると稚内管内の人手不足は著しく解消することになる。
 この求職増について藤本氏は今、地元事業所が精力的に開いている企業説明会も寄与しているのでは―と話していたが、この数年、人手不足対策として職安や稚内市、振興局、商工会議所が行ってきた努力が奏功したということになるのか。
 昭和40、50年代の高度経済成長期には進学や就職で東京や大阪など大都市に行き一旗上げてやるという強い意識を持った若者が多かった。バブル期を経験するなど〝失われた30年〟の間に、若者の間に内向き志向が根付き地元での進路を選択する若者が増え、ここに来て一気に花開いた感がしないでもない。
 若者の地元志向を否定するわけではないが若いうちは親元を離れ社会生活することで人間として成長すると思い込んでいる筆者にすると、今年の高校生の求職増、それも地元割合が高いことは歓迎することではない。
 「余計なことを書くでない」と叱られそうだが、親の庇護を離れた自立こそ当人を成長させ、その後、Uターンすれば役立つ人材になるものだからだ。