時の話題 「人生の一端」
60年以上前のことで東京の80歳の男性から電話があった。20代前半の頃、稚内方面まで旅をし腹を空かし海岸でコンブを食べていたところ、そこに居合わせた初老の男性に5000円いただき札幌まで行ったとの話をする中、その男性が稚内プレス社長であったとの記憶から会社に連絡してきたもので、電話の主は借りたお金を返しに稚内まで来るような話をするので来市を固辞し一件落着した。
帰宅し妻(プレス社長次女)に訊いてみると、学生らしき人を家に招き食事をしてもらったことが記憶にあると話していたので、高齢の男性の話は本当なのだろう。
人の縁は不思議なもので、個人的な事を申し述べればプレス社に入ったのも社長次女を嫁にしたのも偶然と成行きの結果で、まさに縁は異なものということになろうか。
この仕事をし数多くの人との出会いを重ねるなかの要諦は程々の距離を保つことで、これは報道の客観性にも繋がることである。要は薄く広くに徹し深入りしないことと判っているのだが、性格もあって濃い付き合いになるケースが間々ある。
人は誰でも己が人生を振り返る時、若気の至りゆえの行状に赤面し顔に汗する。
レールをつつがなく進もうとするのも楽ではないが、変化激しい人生を歩むのも大変で苦労しない生き方ないのかな―と思わないこともない。
家康のよう長生きし天下を取るのが青雲の志ある時の思いだったが、老いてくると生きても十年と諦観が強くなり、無駄な諍いを止め安穏に暮らせばと願っているのだが…。