天北堆

 人間というのは我儘なものである。暑いと雪が恋しいとか、欲する者・物を入手できなければ他の領域を侵してまでも手に入れようとする。60歳位までは人間として至って必然的なことと思っていたが、還暦から10年も経つと「哀れなことよ」と思うようになる。何故かと言うと恐らく寿命が近付き仏の境地に少しでも近づきたいと思うからなのかも知れない◆小説家になるには辛抱強くなく言葉も知らない。ただ人間観察だけは―と自惚れてもさほどでなく平凡過ぎる◆ほとんどあきらめて人生を送るのだろう。