時の話題 「優秀ゆえの墓穴」

 兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ問題が先鋭化し、県議会に百条委員会が設けられ本人への事情聴取など行われ、選挙で支援した日本維新の会にも見捨てられるなど風前の灯と化している。
 パワハラだけでなく視察先の〝おねだり〟などトップらしくない言動は枚挙にいとまが無い。
 東大在学中には高級マフラーの「フェンディ」を巻いていたそうで、今風の表現を借りれば「チャライ」人間だったという。
 斎藤氏は1977年神戸に生まれ、東大の経済学部を卒業し総務省に奉職。佐渡市、飯舘村、宮城県、総務省大阪府財政課長など務めたあと、21年8月の選挙で兵庫県知事となった。
 中・高校は、灘中学鹿児島ラ・サールと並び〝西の御三家〟と呼ばれる愛媛にある中高一貫の愛光中・高に進学し寮生活を送り、同期の寮生とは今でも年数回、神戸で集まっているという。
 東大に入学した頃にはケミカル(合成皮革製)シューズを製造していた実家の経営が傾き奨学金を利用し学業に励んでいたそうだ。
 辛苦を知っている斎藤氏が弱い立場の部下や視察先でおねだりしたのはこの境遇がいみじくも語っている。頭脳明晰で体験が豊富な人間は仕事を素早くできない弱い立場の部下にパワハラする傾向がありおねだりは大学時代の苦労から来るものなのだろう。
 李下に冠を正さずとの言葉があるが、優秀な斎藤氏である。この言葉を知らないはずはなかろう。
 若い時の優秀さを脱却し大人の言動をするべきだったろう。