樺太引き揚げ者取材 敬和学園大学 「平和噛みしめ生きて」と濱谷さん

 敬和学園大学(新潟)の学生が21日、樺太引き揚げ者で市内在住の濱谷悦子さん(84)にインタビューし、辛く悲しい過去の記憶について聞き、濱谷さんともども恒久平和への思いを強くしていた。
 敬和学園大学人文学部国際文化学科に在学するロシアと日本ハーフのチルネショーワ真梨弥さん(4年)が、樺太の歴史など辿る卒業制作のドキュメンタリー映像を撮影するため、同学年の宮路晴夏さんと2006年まで前北星大学で教授を務めていた一戸信哉教授と共に、20日から稚内を訪れている。
 濱谷さんが5歳まで過ごした豊原(現ユジノサハリンスク)から父を除く家族5人で稚内に引き揚げて来た。「宗谷海峡に仕掛けられていた魚雷に当たることなく辿り着き命拾いしました。乗船した船は定員オーバーで少し眠るだけで船が傾くと怒られたことを覚えています」と重たい口を開く。
 捕虜となった父が数年後、戻ってきた際には「収容所については喋りたがらなかった。でも生きて帰って来ただけで幸せだった。シベリアに連れて行かれた人は亡くなる人も多く、満足に葬られなかったでしょう」と悔しさを滲ませていた。
 辛い記憶を呼び覚まし「後世に事実を伝えることが使命」と、およそ2時間に及ぶインタビューを受けた濱谷さんは「今の平和は莫大な犠牲の上に成り立っていることを忘れてはいけない。一日々々を大切に、平和を噛み締めて生きて欲しい」と強く訴えていた。
 インタビューを終えたチルネショーワさんは「平和や日常が当たり前じゃないと感じた。自分と同じ世代に向けたドキュメンタリーで伝えることが出来れば」と話していた。
 今後、新潟の引き上げ者からも話を聞き、映像作品を完成させる。

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