時の話題 「週末ならぬ雑感」

 社屋執務室から見える光景も淋しくなっている。以前建っていた家が2軒無くなり更地となり、ふと見ると物を収納する荷台のような二輪車を引く高齢者の姿があった。10年ほど前には余り見られなかった様子にこの街の衰退をみて取れる。
 道内では札幌など道央地区を除き軒並み人口が減り旧産炭地の無残ぶりが極立つものの農業も漁業も廃業する人が増え、ならば札幌でも行き人生を立て直すかと期するも現実は甘くなく都会の片隅に埋もれる家族がいる。
 稚内からも小金を持った家族が移住しているのを聞くが、大して多くない老後資金を息子・娘に使われ帰郷できるのなら未だしもビル群の一角で耐え忍び生活する人もいる。
 自力で生活できなくなれば生活保護など公的助成を受ければいいだろうと短慮するも、先ほど述べたように小金を持ち稚内を離れているので言うほど簡単に故郷には戻れない。成功者ゆえのプライドと言いますか見栄と述べますか、そこが人の不可思議さなのであろう。
 黙って余生を稚内で過ごせばいいものを、病気になってもいない体の事を気遣い、果ては子ども達の事をおもんぱかって離れた結果がそのようだとしたら、これほど惨めなことはなかろう。
 もう少し人がいて天候が四季通して穏やかならいいのにと望むも市や振興局など行政も今の人口3万人くらいが街づくりしやすい規模では―と勝手に思っており、その意味合いからは住み慣れた土地がいいのに是非はなかろう。筆者は小金もなく稚内に停まることになるに違いない。

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