時の話題 「天下に比ぶれば」

 そんなに古くもない昔、還暦60歳と言えば高齢者のイメージが強かったものの、今し方の60歳は元気バリバリと言う来年古希70歳を迎える筆者は「元気」そのものとまで強弁せぬも程々壮健である。
 能の「敦盛」に出てくる「人生50年、下天のうちに比べれば夢幻のごとくなり」のよう本能寺の変で明智光秀に奇襲され無残な死を遂げた織田信長は49歳だった筈で、その後天下人になった秀吉は60歳、家康は65に届かぬかという命が、その頃の寿命だった。
 寿命まで10年残していた信長が生きていれば「天下布武」の隅々まで天下統一を成し遂げ絶対君主的な存在になったことは容易に想像できよう。
 仮想現実ならぬ夢物語を論じても詮無いことなのだが、信長が10年、いや5年生きていれば秀吉、家康の時代は無く、徳川の江戸幕府の260年は正に夢幻のごとくであり明治維新は無く、鎖国という愚行は起きず、日本は資源奪取が根底にあった太平洋戦争は有り得ず、世界に開かれた国を実現していたのではと想像する。
 現実は戦争は起き敗戦後の塗炭を舐めるような困窮を経て高度経済成長を成し遂げた日本。バブル経済に浮かれ〝失われた30年〟を経験する中、非正規社員の大幅採用により自らの会社は内部留保増えるも国内経済を貶めた大企業の罪は重く政治も同罪であろう。
 自民・社会の55年体制から自民が下野する政変劇が2度あるも烏合の衆とも言える政治家による国家安泰はならなかった。その挙げ句が先祖返りの自民党政治である。変革せねば国が持たない。