時の話題 「本音と建前」

 世の中は本音と建前で成り立つ。端的な例が福島第一原発に溜った処理水の海上放出問題で「あなた達(漁業者)の同意を得ず処理水を放出することはありません」と口約束したにも拘らず放出してしまった政府を指す。建前では相手に寄り添ったことを言いながら本音は「そんなこと構っちゃいられない」とばかりに意図も簡単に放出し、漁業者ばかりか一衣帯水にある中国の反感を買い水産物の全面禁輸というしっぺ返しを食らってしまった。漁業者への補償に数百億円を出そうとする気前良さ。この国の政府はなってない。
 翻ってマスコミ、とりわけ社会の木鐸たる新聞は社会の本音を探り出すのが商売で、私ども(稚内プレス)は棚に上げ幾つもの特ダネ=本音を世に問うている。
 一地域紙の記者として40年従事してきた筆者思うに本音=特ダネ=相手が不快に感じる記事を書くのは結構胆力が要る。パチンコひまわり事件、ウエンナイ川ショートカットに伴うショッピングモール建築など、画策する輩の事を書くのは小さなマチだけに厄介なもので、面と向かって対峙する輩は少なかったが陰に陽に圧力をかけてくる事案があったのも事実であった。
 言動を使い分ける本音と建前の本来持つ意味とは違っているが、儲けを優先する本音と地域の発展に寄与するなどと言う建前の持つ経済優先はまさに本音と建前そのものであろう。
 国が常に有する二面性どころか多面性に政治の狡猾さを垣間見ることがよくあり、国民が納得するのは不可能である。