時の話題　「竦む思い」

　歩いていて偶に足竦む思いがすることがある。いつも見ているのと違う光景を見た時に多い思いなのだと勘違いしやすいが、いつもと代わり映えしない時に頭を過ることがあるので人間の心中の不可解さを覚えてしまう。
　国民の弔問が跡を絶たず、厳かに執り行われた英国のエリザベス女王の国葬の様子をテレビで見ていて思ったのは今月２７日営まれる安倍晋三元総理の国葬のことで、国葬にたる人物なのかという話に及ぶ。
　確かに歴代最長の都合８年８カ月もの間、総理を務めアベノミクスという経済政策で〝失われた２０年〟にあった日本経済に喝を入れたのは事実だが、一般庶民の懐具合が良くなったかと言えば「否」。かえって貧富の格差が増してしまった。
　参院選街頭演説中に凶弾で倒れるという蛮行に一時は「国葬も」との考えが岸田総理だけでなく我々国民にも芽生えたのに嘘偽りはなかった。その後の旧統一教会との祖父岸元首相から続く安倍氏個人の腐れ縁、そして加害者の母親の１億円を超える教会への寄進―など事実が暴かれるにつれ「国葬止むなし」という空気が変わり国葬反対の意見が多数を占めるようになった。
　個人的には安倍さんは同年代であり日本のため粉骨砕身したと評価しているが、森友、加計学園、桜を見る会の疑惑もあり内閣葬もしくは自民党葬が妥当だろうと思っていた。しかし、岸田総理は何とち狂ったのか早々と国葬としたのは個人的友情のほか政治的思惑もあったのであろうが拙速だった。
　「聞く耳」はまやかしだったという事だ。