時の話題 「高尾荘の人々」
昭和を代表する手塚治虫や藤子不二雄、赤塚不二夫、石ノ森章太郎ら名だたるマンガ家たちが下積み時代を過ごした〝トキワ荘〟を再現した「トキワ荘マンガミュージアム」が今月7日、東京都豊平区に開館した。
当時、手塚と共にトキワ荘の主的存在だった寺田ヒロオさんのことに触れた10日の読売新聞の記事を読み、ふと筆者が大学受験浪人時代に住んでいた高尾荘を思い出した。
高尾荘には筆者など大学浪人中の8人のほか、遠藤さんというアルバイトをしながら生計を立て神奈川大学に通う方がいた。
机や生活用品のほか布団を敷くのが精一杯という3畳間だったが、1階奥にある遠藤さんの部屋だけは半畳ほど広いこともあり我々浪人生は夜遅くバイトを終え帰宅する遠藤さんの部屋に行き紅茶(ダージリン)を飲みながら何やかにやと話していたのを覚えている。
何を話したかは記憶していないが、遠藤さんが説教がましい事をいう人でなかったので、たわい無い話をしていたのでは―とは思う。
皆んなカネが無いので高級な紅茶を飲みたい一心だけかも知れないし、淋しさを紛わすためかも知れないし、何よりも受験のプレッシャーから一刻でも解放されたいとの気持ちが強かった。3畳のぼろアパートながら住んでいた若者たちには夢があった。
あれから50年近く経ち遠藤さんらはお元気なのかと思い起こす。
当時から頻繁でないが折々連絡を取り合っている九州の大分に住む高田さんに大雨のこと尋ねたが、家が高台にあり難を逃れたと聞き安心している。