「リスク覚悟で取組む」 新エネ研 地域新電力セミナー開く
稚内新エネルギー研究会主催(稚内市共催)の地域新電力セミナーが17日午後、宗谷経済センターで開かれ、青森県民エナジーの富岡敏雄社長と富岡哲平取締役が立上げ時の苦労話と地域新電力会社の役割など講演した。
石塚英資新エネルギー研究会長は「㈱北風と太陽エナジーがメガソーラー発電を市の公共施設などに供給する上で全国各地の地域新電力の事例を知ることは意義深いものがあります」などと挨拶したあと富岡社長が設立時と事業稼働後の様々な苦難を乗り越えたことから話を始めた。
きっかけは北欧への研修旅行でデンマークのコペンハーゲンで見た壮観なウインドファームと農場にも風車が点在し魅せられたことで、2005年に市民風力「おおま」の運転を始めたのはいいが売電価格が1㌗H単価9円と安く従業員は雇えないし役員にも手当を支給できず、修理費も捻出できない八方塞りの状況になったが、民主党政権の菅内閣によってFIT(固定価格買取制度)が単価18・74円まで倍以上に上がったことで急場を凌ぎ新たな事業に取り組むことができたと話す中このFIT価格決定が東日本大震災が起きた2011年午後2時46分の午前中だったという裏話もした。
青森県民エナジー(小売電気事業)、さいエナジー(青森県初の自治体新電力会社)によって〝自産自消〟の夢が実現するも電力の市場価格の高騰によって更なる苦境に陥り1億5000万円の負債を背負うも「分かちあう精神」で乗り切り、負債もほぼ返済し今に至っているとした。
富岡社長は地域新電力事業の課題として「地域主導でやるべき」だとする一方、ユーラスエナジーなど大手企業との共生で、稚内市の地域電力会社においてはユーラスが現実的に多くの風力発電施設を稼働しており難しい問題でないことも話した。
最後に「リスク覚悟でやることが大切」と話していた。
富岡哲平氏は、新地域電力のポイントとして▽安定供給の確保▽電気料金を最大限抑制すること▽需要側のニーズに多様な選択肢に応えることを挙げた。
地域で作る新電力は料金を安くするだけでいいのか―という命題も投げかけ、地域新電力があることで電気で生まれた料金(お金)が地域内で循環することを説いた。
電力の地産地消によりエネルギーに要する費用の安定化と、「脱炭素+アルファが必要」と力説した。