時の話題 「冬を前にし」

 雪が降る季節になり服装を代え車のタイヤを交換する中、漬け物用のダイコン干しも散見される。昔は北国の風物詩ともいえる光景だったが今はめっきり減ってしまった。
 筆者は新婚時代、中央5丁目の借家に住んでいたが、隣りの当時稚内ヤクルト販売社長の早坂さんの奥さんが漬けた漬け物をよく戴き食べ、そのおいしさはその時までもその後もこれに勝る漬け物を食べたことがない。それだけ上手だった。
 妻は初冬に漬け物を漬けることはないが、年間通して偶に漬けるキュウリなどはよく出来上がり我が家の食卓に潤いを与えている。筆者だけでなく、どこの家も妻君や祖母がつくる漬け物に舌鼓を打つ男衆も少なくないことであろう。
 昔はほとんどの家の窓枠が木で出来ていたので冬の寒風防ぐビニール張りも年中仕事のようなもので、男も女もやって来る冬の身支度をしていた。
 そのような光景を今ではすっかり見ることがなく進化した住宅の恩恵に浴している。寒風除けといえば室内から張ったりなどの対策をし便利になったことこの上ないほどだ。
 子どもの頃、アクを捨て重い石炭運びを手伝わされた石炭ストーブは完全に無くなりタンクに給油してもらう灯油ストーブで暖をとり雪国には向かないがオール電化住宅も今では増えている。文明が発展し便利な世の中になった今日此の頃だが人間として忘れてきたモノやコトないのか。
 筆者含め回りの人間は〝終活〟に入っているようで、今生のモノ・コトだけでなく想い出さえも捨て去ろうとしている。