時の話題 「カニの街の終焉」
一時は月1000㌧もの輸入があった稚内港の活カニがとんと減ってしまい今年1月には到頭ゼロになった。
平成3年1月以来26年ぶりのことだそうだ。
平成26年12月の日本とロシアとの活カニ密漁密輸防止協定発効以降の活カニ輸入は減少の一途を辿るもゼロということはなかった。実際、カニ運搬船は1月に7隻入港しているが、通関されることなく〝保税運送〟として他の港や新千歳空港までカニが運ばれ、到着地で輸出申告され韓国や中国に輸出されている。カニの街として一時代を築いた稚内としては由々しき事態であり協定発効による損失は計り知れないものがある。
活カニを取う業者も淘汰され今は何社残っているのか。存続している工場でも従業員解雇などあり、最早カニによる商売は破綻寸前まで追いつめられているというのが現状なのでなかろうか。
故人となった筆者の級友も活カニ卸し・小売り業を営んでいたことがあり、嘘みたいな話だがタラバが1㌔1000円、3㌔以上の大型でも3、4千円で買えた時代があった。しかし、今は稚内ばかりでなく日本国内での流通量が極端に減っており、比例し高嶺の花になっているのは皆さん承知の通りである。
協定破棄など劇的な事がなければ昔日の姿を取り戻すのは百%無理であろう。引き合い旺盛な中国、韓国の需要が極端に落ち込むことは想像しにくく、そういうことでは輸入活カニの時代は完全に幕を閉じたといえるか。
一時、稚内経済をけん引した活カニ終焉は世の移ろいを如実に現した出来事といえよう。