年頭所感 地方いじめと大学 稚内北星学園大学学長 斉藤 吉広

 昨年9月に「公的病院を再編・統合へ」という新聞の見出しを見た瞬間には、「まさか宗谷は対象外だろう」と甘く見てしまいました。なにしろ、人口当たりの医師数で道内最下位であり、2月に厚労省が〝より実態に即した目安〟として発表したばかりの「医師偏在指標」では全国で下から2番目だったのですから。
 ところが、厚労省はその宗谷から4つの病院を名指しして、再編・統合への議論をせよと迫っているのだと記事は伝えていました。不便な地域をより不便にして住みづらくし、地域間格差をさらに拡大させようというのですから、驚きあきれ、怒りがわいてきます。
 そして同時に、医療でも教育でも同じことをやるのだなと思い至り、やるせなくなってもきました。「利用率が低く採算性の悪い施設はなくなっても大丈夫なはずだ」という論理で切り捨てられる。しかしそもそも、JRにせよ、病院にせよ、大学にせよ、儲かるから存在価値があるのではなく、地域が必要としていれば存在価値があるということなのではないのでしょうか。
 特にここ2年ほど、経団連も内閣府も中央教育審議会も「市場競争力の低い大学は再編・撤退せよ」と言い募るようになり、文科省は兵糧攻めのような補助金圧縮を強めてきました。私立大学ではあっても、地域にとっては「知」のインフラとして公共的な存在であるに違いありません。ことに稚内北星学園は高等教育機関の広大な空白地帯を解消すべく、地域の熱い思いで生まれたのですから。
 もちろん、ただ存在すればいいというもではなく、どれだけ地域の経済や文化に貢献しうるのかが問われなければなりません。2014~18年度のCOC事業をきっかけにして学生が(まちを教室にして)活動し、学び、成果を生み出しましたし、大学としても地域の各種団体・期間との連携と協働を深めることができたと自負しています。
 他方、地元産業との研究面での結びつきは弱いままでした。漁業、酪農や再生可能エネルギー、観光などの面で産学で協力しあいながら新しい価値を生み出すことはできないものか。さらにそうした結びつきを、例えば一次産業でのIT利用や風力発電システムのメンテナンスの人材育成に結実させることはできないか。そしてまた「養護幼保小中高大連携」や「稚内キャリアデザイン」においてもっと積極的な役割を果たしえないか。
 昨年暮れの既報のとおり、本学は来年度から学校法人育英館の支援を受けて経営再建に取り組むことになりました。育英館の松尾理事長は、「地方で人材育成しないと日本は滅びる」との信念をお持ちです。地方いじめに負けない地域づくりのために、本学の存続はいくばくかでも寄与できますよう願ってやみません。

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