時の話題 「高齢の指揮者」

 特別なクラシックファンでもないのだが、日曜の夜、NHK教育でNHK交響楽団の演奏を視聴していると、高齢の指揮者がマーラーの交響曲第一番「巨人」の指揮をしていたので聴き入るというより見入ってしまった。
 番組の解説で高齢の指揮者が巨匠ヘルベルト・ブロムシュテット氏であることを知り、1927年米国生まれというのだから御年91歳になる。タクトを持たず自分の手と指をタクト代わりに指揮する姿は往年の大指揮者カール・ベームを彷彿させるものであった。
 「巨人」どころかブロムシュテット氏の一挙手一投足と共に彼の指揮に応えようとするN響楽団員の見事な演奏に時間を忘れ酔いしれた。更には40年ほど前の彼がN響を指揮するチャイコフスキーの「悲愴」の演奏でタクトを激しく振る様子も放映され年は人間をここまで変えるのかと感慨に耽ってしまった。家人が寝静まった深夜の一時はまさに至福の時間であった。
 同じヘルベルトでもベルリン交響楽団を率いたカラヤンは年を取っても激しい指揮をする人だった。ブロムシュテット氏のそれは「人間は年と共に変わり、それが私の生きざまなんですよ」と教えられているかのようで、俗世間で呻吟する我々を嘲笑っているかのようでもあった。
 四畳半ほどの会社の部屋で小欄と「天北堆」の原稿を書き、午前中は商工会議所などに寄り、帰宅し自宅近くの新聞配達をし、夕食を摂り9時からのニュースを見て床に入るという繰り返しの中にあっても新たな発見がある。そうすると年甲斐もなく小躍りする。

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