14歳という若さでプロ棋士になった藤井聡太四段がデビュー以来公式戦負け知らずの29連勝という金字塔を打ち立てた。羽生善治三冠(22連勝)でさえ成し得なかった記録をプロになりいとも簡単に樹立するのだから並でない。それにしても天才、秀才が集まった棋界で負けぬとは。勝利後の感想も冷静に語彙豊かで、佇まいを見ていると将来には間違いなくタイトルを取る逸材であろう。恐れ入りました―というのが正直な感想である。
 将棋指しといえば「王将」の坂田三吉のよう豪放磊落さと将棋への一途さゆえの、一般の社会とは懸け離れたイメージがあるが、最近の棋士というのは羽生さんや将棋連盟の佐藤会長、谷川前会長のよう折目正しく常識も併せ持った人が多くなったような気がする。
 皆、秀才で破天荒な生き方をする人はなく台頭するAI(人工知能)将棋を前に右往左往する棋界に突如、新星が神のごとく降臨したような藤井四段の破竹の躍進によって今、子供たちの間に空前の将棋ブームが起きているという。
 筆者はへぼ将棋の典型なのだが、世の中にはプロにならずとも上手な人はごまんとおり、20年以上前、読売新聞稚内支局にいた中村記者は到底歯が立たぬ強さであった。藤井君のニュースを見ていてふと思い出した。
 将棋も囲碁も攻めは大事だが守りはそれ以上大事で、守りきった後に怒涛の攻めに転じると大抵は負けない。
 負けない将棋を重ねると藤井四段のような記録を達成する。しかし勝ち続けることはなく負けた時、何を学ぶかが岐路になる。