大相撲秋場所は「クンロク(9勝6敗)大関」どころか負け越すカド番が何場所もあり、大関の中で一人、白星上がらず注目されなかった豪栄道が15戦全勝という日本人力士として貴乃花以来20年ぶりの快挙を成し遂げ初優勝した。
 今場所も注目は稀勢の里の綱取りだった。4場所連続の綱取りへのプレッシャーは半端なものでなく場所前の稽古に精彩がなく案じていたが、予想通りの結果に終わった一方、優勝など夢のまた夢の豪栄道が人が変わったよう全勝優勝してしまうのだから一発勝負の世界は分からない。
 そもそも狭い土俵で巨漢同士が相対するわけなのだから番狂わせがあっても不思議でない。しかし、大体が番付通り強い者が勝つ。豪栄道は「強い」というより「弱い」ほうだっただけに、大逆転の優勝には相撲の面白さを堪能されたファンも多かっただろう。
 休場した大横綱白鵬にそろそろ陰りが見られ群雄割拠する時代になった感がある中、御嶽海や正代ら若手も台頭してきており、稀勢の里の弟弟子高安は来場所、大関昇進が懸かる。何かと話題尽きないのだが、足のケガで十両10枚目まで落ちた安美錦が8勝7敗ながら給金を直してくれたのが嬉しい。
 今場所の戦いぶりから豪栄道の来場所での綱取りの可能性は高い―と言い切れないのが勝負事のもどかしいところである。
 ケガなく稽古をし本場所に備え天運を招きそれを裏切ることなく精進した力士に天皇賜杯は贈られ、地位も名誉も何もかもが与えられる。土俵にはそのすべてが落ちている。