32回目にして初めて稚内で開かれた道防衛局主催の防衛問題セミナーに臨場した。防衛省のシンク・タンクである防衛研究所の兵頭地域研究部長と藤原稚内分屯基地司令2人の講話を聞き改めて感じたことがある。稚内は対ロシア前哨の要衝として昔も今も変わりなく、そういうことでは地政的に決して我々市民は安全な場所に住んでいるわけではない―ということだ。
 昭和58年の大韓機撃墜事件で稚内分屯基地のレーダーから機影が突然消えたのを確認していたのは知る人ぞ知る事実であり、冷戦下の稚内レーダーサイトが持つ重要性に敢えて言及するものでないが、稚内が国境の町であるのは否定するものでなく、ロシア軍艦の宗谷海峡通過は偶に記事になり承知していたものの、中国軍艦の通峡が多いことを今回の講演で知るに及び、それは地球温暖化による北極海航路が深く関与していることも改めて分かった。
 講話の内容を別にし何故、32回目にして稚内開催に至ったのか。尖閣諸島含め中国との南洋国境が喫緊の課題なる中、冷戦時代に比べると逼迫性はないものの、日本の防衛にとって要衝なのは変わりなく防衛省として住民にも少しは知っておいて戴きたいと意図したのではなかろうか。
 「東アジア地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、安全保障及びエネルギー分野を始め、あらゆる分野でのロシアとの協力を進め日露関係を全体として高めていくことは、我が国の安全保障を確保する上で極めて重要である」。2年前に策定された国家安全保障戦略である。